まぁ実際、陽路はそんなことしないんだから、そんな風に見えないのは当然。しかも、あたしがツラいと思ったことなんて、ないに等しい。
「…とりあえず桃のために、陽路から藍前君を離した方がいいね。あ、陽路の笑顔にダマされたらダメだよ?」
「はい!私、美香先輩を信じます。ね、桃?」
「うん…。」
男だけが単純な訳じゃない。
自分の気持ちの妨げになるようなモノは、誰だって受け付けない。その心理を利用すれば、誰でも敵に仕立て上げることだってできるのよ。
マネ業に戻り、ドリンクボトルを抱えて自分の担当するコートに戻っていく二人の後ろ姿を見ながら、思わず笑みがこぼれた。
どこにいたとしても、あたしが“一番”じゃなきゃダメなんだから。