「寿也…?」
恐る恐るそう呼びかけ、寿也の顔を見つめる。すると寿也は、一瞬もの悲しい表情を浮かべたと思った刹那、すぐにいつもの表情に戻り、あたしにニコッとほほえんでくれた。
「大丈夫ッスよ!何にも気にしてなんかないッス。だって俺は、陽路先輩に笑っててほしいだけッスから!それに、俺がこんなことでへこむ訳ないじゃないッスか。」
そう言う寿也に、あたしもほほえみ返す。
今は今、余計なことは考えちゃダメだと、自分に言い聞かせて。
「あ。みんな、そろそろ着くよ。」
気まずい雰囲気を打ち消すように車内に晴人の声が響き、各々が窓の向こうに視線を向けた。
しだいに見えてきた合宿の場は、奥には大きな宿舎があり、その手前にはコートが四面ある。コート横には、マネがドリンクづくりに使うのであろう水仕事場が設備されていた。
「気合い入れて行くぞ!」
そしてまもなく、すぐに停車したバス。
止まったバス内で章一がそう言うと、みんなは大きくうなずいた。