フェンス沿いに歩いていると、テニスボールを手にしている慈朗の姿が目に入った。声をかけようかどうか迷ったけれど、もう明日から会えなくなるし…


「慈朗!あたし帰るね。……ばいばい。」

「ん?あぁ。またね〜♪」


にこりとほほえみ、大きく手を振る慈朗。
でもごめんね。あたしに“またね”はないんだ。一緒に過ごす、明日はない。

潤む瞳を押さえ、校舎をあとにした。
中等部に外部入学してから今まで通った、思い出深い校舎。2年ちょっと通えば、さすがに名残惜しさもわいてくるよなぁ。

それにあたし、学校自体は嫌いじゃなかった。クラスメートとも、誤解がなければきっと今もうまくいってた。

でも、でもね…

ばいばい、凌葉。
ばいばい、みんな。
ばいばい、大切な人たち。
ばいばい、今までのあたし。

今が、決別のときだよ。