あたしにとっての問題は、凌葉なんだ。
凌葉は、あたしが中等部三年生の途中まで通っていた学校…。
別に嫌いな訳じゃないけれど、いい思い出なんてすべて、あの僅かな期間でことごとく踏みつぶされてしまった。たった一人の陰謀によって……。
だからあたしはあの日、後味の悪さだけを抱いて凌葉から去った…否、去らざるを得なかった。
守るべき人のために、大切な人のために…。言葉通り、全てを捨てて。
今と同様、男子テニス部のマネをやっていたあたし。まだいっぱいやりたかったこと、言いたかったこと、あったのに。
ふと、プリントから倒れたままの写真立てに目線を移した。あの中には、まだ笑顔がある。あの写真を撮ったときはまだ、誰も傷ついてなんかいなかった。
ぽつっという音がしたと思いうつむいてみると、プリントに小さなシミができていて。不思議に思って頬を触れば、なぜか頬が濡れていた。