「陽路先輩!渡部さんが階段から突き落とされて、怪我したの聞きましたか?」
あたしが部室に入るなり、息つく間もなく話し出したのは緒太。普段の彼らしからぬ焦り具合に、ただならぬものを感じた。
……っていうかまず、“突き落とされて”ってどういうこと?“怪我した”って何なの?
「…待って。全然話がみえない。詳しく教えて?」
まだ緒太と健、貴司の一年生トリオしか集まっていない部室。あたしはカバンと松葉杖を所定の位置に置くと、イスに座ってそう問いかけた。
「俺も、川瀬さんからさっき教えてもらったんですが……」
真剣な表情で、緒太が話し出す。