「…そーだよね。俺が泣いてちゃダメじゃん。」


そう言って慈朗は、ゆっくりとあたしから体を離した。光る瞳があたしを捉え、にこりとほほえむ。

慈朗、前にあたしに言ったくせに。
“無理して笑わないで”って、確かにそう言った。なのに今…、今の慈朗の笑顔だって、十分無理してるじゃない。


「はいっ!暗い話はおーわりっ。なんか、おなか減ったな…。渡部、何か食べようよ。」

「あ?お前さっきも食っただろうが…。」


そんな会話を交わし、2人は出口に向かう。そして慈朗は不意にあたしの方に振り向くと、笑顔で口を開いた。


「陽路ちゃんも行こ?」


「…うん。」と答えつつ、あたしは思う。どうしてここまで慈朗は、あたしなんかに笑ってくれるのかなって。