「俺がここで、寿也に全部教えてやるのは簡単だろ?だけど、寿也に話してないのは、ワケがあるかもしれねぇ。だから…」

「わかってるッス…。本人から聞かなきゃ、意味ないッスから。」


沢村先輩が全部言い終わる前に、繋がるはずだったであろう言葉を、俺が紡いだ。

だって、いくら俺でもわかってるんだ、そんなこと。
ここで事実を沢村先輩に聞いたところで、何の意味もないことくらい嫌でもわかる。


「…………冷める前に、食おうぜ?」

「そっスね…。」


沈黙の中で、やっと口を開いてくれたのは沢村先輩だった。一気に食欲が減退していたのを無視して、いつの間にか届いていた料理にゆっくりと口を付ける。

何だか普段使わない頭を使ったせいか、料理の味が全くわからない。つーか、悔しくて悲しくて、訳のわからない想いが頭の中に渦巻いていて。

ただ一つ、確かなのは。
陽路先輩のことが、心配だということだけ。