適当に注文し、運ばれてきた水を一気飲みした俺は、ぼんやりと外を見つめる沢村先輩に向けて一番気になっていたことを尋ねた。
「沢村先輩は知ってるんスか?
陽路先輩に、昔何があったか。」
「………知らないわけ、ねぇだろ。」
ゆっくりとこちらに振り向いた沢村先輩。苦虫を噛み潰したような顔をしながら告げられた答えに、妙に納得しつつも、チクリと胸が痛む。
――そして、不意に沸き上がった予感は、
「今の2・3年は、全員知ってるよ。」
沢村先輩のその言葉で、すぐに立証されて。頭を鈍器で殴られたような、そんな衝撃が走る。
あぁ、やっぱり…。
やっぱり、知らないのは俺だけだった。俺だけ取り残されたような…否、実際に取り残されていたなんて。
――でも本当に、俺だけ。
俺だけが、陽路先輩が悩んで苦しんでる理由を知らないで、今まで先輩に、余計ツラい思いをさせてきたのかもしれない…
ただ漠然と、そう思った。