あたしの目の前までたどり着くと、治はあたしの目線の高さにあわせて屈む。あたしの周りの空気が、凍りついているんじゃないかと錯覚するくらい、背筋がぞっとしてしまう冷たさ原因が、今、あたしの目の前にある。
「…前のじゃ足りなかったみたいだな。」
もともと低い治の声が、さらに低くなって発された言葉。“前の”って、あの屋上の出来事だよね…?思い出すと、痛みと恐怖が頭の中でフラッシュバックする。
また、殴られる…?
体が勝手にふるえ、必然的に下がる目線…。
相手に弱みを見せたら負けだって、そんなことわかってるのに。
そんなあたしを見て治が口角をつり上げ、手を振り上げたのが目の片隅に映った。間一髪で防御することができたけど、今の治のそばにいるのは、あまりにも危険すぎる。

