「…で、どこ行くつもり?」


教室を出てから一言も会話を交わさず、黙々と歩く美香について行く。あたしがそう問いかけると、美香は「内緒〜♪」といつもの調子で答えた。

でもこっちの方向といえば、大きな校舎の陰にある資材置き場ぐらいしかなくて。そこはひとけがなく、日当たりも悪いから暗いし、ハッキリ言って行きたくはない。

でも、美香は恐らくそこに向かっているのだろう。そのことを悟り、美香を無視して引き返そうかとも思ったけれど、美香の話というのも気になったので、そのままついていくことにした。

そして予想通り、美香の足は資材置き場の前で止まる。辺りの壁には、梯子などと一緒に無造作に角材や鉄パイプが立てかけられていて。


「ねぇ〜、陽路。あんたさ、いつになったらあたしの前から消えてくれるの?っていうかまず、部活の子たちと早く縁切ってほしいんだけど。」


不意にそう言って、美香はあたしに振り返る。その彼女の目はいつにも増して冷たく、あたしを捉えていた。