陽路ちゃんを抱きしめたままの体勢。
辺りを、冷たい風が吹き抜けた。俺はゆっくりと体を離しながら、静かに口を開く。


「……わかった。陽路ちゃんがそう言うなら別れよう。でも、一つだけ聞いていい?」


そう尋ねると、「何?」と言いながら、陽路ちゃんは不思議そうに首を傾げる。


「俺のこと、まだ今も好きですか?」


紡がれた問いに、キョトンとした表情を浮かべた。

でも本当は、こんなの愚問なのかもしれない。聞く価値なんて、ないのかもしれない。でも、どうしても今、聞きたかった。どうしても最後に、確認したかった。


「あったりまえでしょ。そんなくだらないこと聞くな。今も、これからも、慈朗のことは大好きだよ。」


そう答え、陽路ちゃんは優しくほほえんでくれた。だけど久しぶりに見た彼女の笑顔はとても切なげで、また胸が締め付けられる気がした。