「陽路ちゃん待って!」


部活が終わったあと、残ってマネ業をしていた陽路ちゃんを待ち伏せ、女子更衣室から出てきたところを呼び止めた。


「…何?あたしに何か用?」


今まで俺に向けられたことがないような、冷たい目が俺を捉える。でもその目は、どこか悲しげで、寂しさやツラさをもたたえていて…。胸が、痛む。


「陽路ちゃん。あの日、何があったの?」


ハッキリと言い放った問いかけに、一瞬陽路ちゃんの顔が歪んで。やっぱり何か、陽路ちゃんの態度を急変させる何かが、あの日彼女の身にあったということを、確信してしまった。

薄暗い闇が、沈黙とともに俺たちを蝕んでいく。グラウンドから、サッカー部の声が時折聞こえた。