あたし、大崎陽路は海星大附属高校三年。去年から男子テニス部のマネージャーをしている。

目前に広がる、いつも通りの練習風景。
ただ、三年生の部員たちが強化合宿に行ってしまったことにより、この場にいないってのが普段と違うところだ。

まだ4月下旬といえ、これだけ動き回れば暑い。マネージャーのあたしでさえ薄く滲む汗に嫌悪感を抱く程なのに、そんな中白球を追って走り回る彼らが純粋に輝いて見えた。

――まぁ、あたしは昔した怪我で長時間走り回れないから、うらやんでる部分も無い訳では無いんだけれど。


「陽路先ぱ〜い!ドリンクくださ〜い!」

「はいよ!」


ようやく練習も休憩時間に入ったようで、我が男子テニス部、唯一の一年生である木原寿也が真っ先にあたしの元に走り寄ってきた。

何とも言えないけれど、犬みたいな愛嬌がある寿也。向けられる無邪気な笑顔が、本当に可愛い。