「もう三年生の先輩たちは、秋田先輩のことしか信じてないみたいだけど、俺たちは陽路ちゃんの味方。それだけは忘れないでね。」
今まで、慈朗をこんなに頼もしく思ったことはなかった。いつも気軽に抱きついてきて、可愛い弟みたいな感じだったのに。今は誰よりも、頼りにしてる。
包帯が巻かれたあたしの手に、慈朗は優しく触れる。そして一言つぶやいたのは、
「俺が同級生だったら、ずっと一緒にいて、守ってあげられるのに…」
どうしようもない一年の壁を嘆く言葉。
苦虫を噛み潰したような、悔しそうで哀しそうに言い放たれたその言葉は、やけにリアルに響いた後、青い空に消えていった。