十数分歩いたところにある、駅前のカラオケボックス。どうやら空いているようで、比較的広い部屋があてがわれた。
「陽路先輩、一緒に歌おうぜ!」
「おぅ。」
部屋に入ってすぐ恭汰に誘われ、あたしもマイクを持つ。やっぱりカラオケ好きだな。…っていうか、みんなに囲まれて騒ぐこの瞬間だけは、どんなことも忘れられるから好き。
たとえあたしが心から笑っていないとしても、きっと、今なら誰も気づかないでしょう?
蝕む闇を振り切るように、
これ以上過去を思い出さないように。
顔には偽りの笑みを貼り付けて。
何も無かったように振る舞うあたしは、やっぱり昔と変わってなくて、誰も信じてはいない。
嘘つきな自分自身を、心底嫌悪した。