街長に抱えられながら、門番が立つ豪邸の門をくぐる。

「我が屋敷へようこそ、リールさん。」

街長は口調こそ慇懃だが、横柄な仕草がその口調を裏切っている。

「早速話をお聞きしたい所ですが、もう夜も遅い。部屋を用意しますから、今夜はそこでお休みください」

私が返事をする前に、街長は人を呼びつけ、部屋の準備をするように命じる。

私の意見を聞くつもりは無さそうだ。

あっという間に、私は見張り付きの部屋に、一人、押し込められた。

賓客用の部屋らしい。
そこここの調度品が、いかにも高級そうだ。

昨日まで泊まっていた宿屋の部屋が、3つは入りそうな大きさだ。

部屋には、トイレと風呂も付いていた。

手の込んだ刺繍がされたカーテンをよけて、窓から庭を覗いてみる。

窓の下にも見張りが見えた。

(お腹すいた…)

部屋のテーブルに果物の入った籠が置いて有ったが、食べる気にはならない。

打つ手がないし、身体も精神も限界を訴えている。

私は、部屋に置かれていた天蓋付きのベッドへと潜り込んだ。