皮算用しながら階段を下りると、今朝も元気に女将さんが朝ご飯を運んでいた。

「あ、リールちゃん、お早うさん!」

「お早う御座います」

「今朝のメニューは、魚もあるよ。

水魚(スイギョ)の方。

味見したけど、なかなか美味しかったよ!」

この世界には、“魚”と呼ばれる生き物は大まかに分けると、二種類いる。

一種は、水を生活環境とする、“水魚”。

もう一種は、砂漠の中でも砂海(サカイ)と呼ばれる環境に住む“砂魚(ササ)”。

砂海は、砂漠の砂の中でも特に細かな砂が寄り集まり、徒歩では通過出来ない地域の事だ。

歩いて渡ろうとすると、その身はズブズブと、下へと沈む。

砂海を渡るには、特殊な船か、飼い慣らされた大型の砂魚が利用される。

魚の話に戻るが、同じく“魚”とは呼んでいても、二種の魚には、大きな隔たりがある。

大まかな特徴としては、砂魚の方が、水魚より大きな物が多く、砂魚は料理すると、陸上で生活する家畜の肉に似ているのに対し、水魚は淡白な味。

姿形や、呼吸方法こそ似てはいるが、水魚と砂魚には種族的繋がりは無いと言われている。

水自体少ないこの世界においては、水魚は特に高価な食材だ。