「大体さぁ、流しの吟遊詩人なんて、うまい奴見たことねぇな。やっぱ専属の歌姫でも雇えば?華がないとね、ハナが」

男は酔っ払って潤んだ瞳で店を見回した。

女の子がちょっと酔っ払って潤んだ目をしてるのは可愛いが、ムサい男の酔っ払いがクダを巻ながら潤んだ目をしても、見苦しいだけだ。

関わり合いになるまいと、酒場の客達は酔っ払った男から目を逸らす。

そんな中、ぼんやりと男を眺めていたら、ウッカリ目が合ってしまった。

「なんだ、居るじゃん、可愛いコ。」

(ま、マズい…)

焦る私の心情を知ってか知らずか。

男は、こちらへと千鳥足で近付いてきた。