「そうか。
なぁ、お前、名前まだ思い出せて無かったよな?
“カインリール”を名前にしとけばどうだ?
あまり女の子向けで無いが…。
略して“リール”とかどうだ?」

“リール”…口の中で転がしてみる。

悪くないようだ。

「うん、リールにする」

仮とは言え名前が決まった事で、今までふわふわして実感が無かった世界と自分が、真実味を帯びたように感じた。

ようやく地面に足が付いた気分だ。

ガルンは、にばっと笑って、最近お決まりになった私の頭へ手を伸ばし、わしゃわしゃと乱暴に撫でた。

と、ふと考え込むように、顎に手をやる。

私は、問いかけの視線をガルンにむける。

「いや…あれ?なんか、おかしいんだ。
体が軽い気がする。
まるでふかふかの寝床で一晩グッスリ眠って疲れがすっかりとれたような感じなんだ。
お前の歌のおかげかな」

この時はまだ、私は自分の歌の効果とは思っていなかった。

そのため、ガルンのお世辞は過剰だなぁと感じただけだった。

「お世辞、嬉しい。」