water song(みずうた)

『守りたいと、"今度こそ"と思ったんじゃないのか?』

その声は、心の底から。

響き、俺を苛む。

ハッと起き上がる、砂の上。

傍らには、ここ最近で馴染んだ気配が、ない。

当然だ。

自分が置いて来たのだから。

カッとなって、我を忘れた。

そして、彼女を置き去りに。

奥底で、燻っていた火種が、あの男を見て、はじけた。

それは、赤く、村を焼く色。

それは、紅く、ばぁさまを染めた色。

「ふぅう。」

ゆっくりと、押し出す息。

自分を、落ち着かせる為。

火種を、収める為に。

起き上がり、小さくなっていた炎に、砂をかけて消す。

月明かりに照らされた、拳をギュッと握る。

手を月に翳すと、手の甲に満遍なく生えた体毛が、月明かりをキラキラと反射する。

『太陽の匂い』

記憶から、蘇った声。

試しに、手の甲の匂いを嗅いでみる。

(そんな匂いは、しない)

代わりに、血臭がした気がして、腕を下ろす。

常に自分を取り巻いていた匂い。

彼女と居た時は、感じなかった事に、ふと気付く。

(俺は、何を夢見ていたのか。)

綺麗で、優しい自分。

それは多分、彼女の見せた幻。