遠くからも見えた、緑。

近付くにつれ、その大きさが、わかって行く。

ドーナツ状に取り巻く街の建物の壁は、サカナとは異なる質感。

それもその筈。

すべて、木で出来ているそうだ。

毎年大きく育つ枝を切り、建物の材料としているらしい。

ザワザワ…。

風が吹くたび、木の葉が揺れる音が響く。

水の気配が、するのだが、サカナの様に、近くには感じられない。

まるで、木の箱の中に閉じ込められているような、距離感。

樹が呼吸するたび、放出され再び取り込まれて…。


ギュッ。

先ほどより、強く握られた手の温もりに、我に返る。

「リールさん…」

また…か。

最近、おかしい。

無意識の内に、水の気配を探して、心が身体から離れてしまう。

セリの瞳が、不安げに揺れている。

安心させようと、セリの手を握り返し、首を振ってみせる。

何でもない。大丈夫。


私達は、二人を追いかけるため、再び歩き出した。