「泣いた、のですか?」

かけられた声に、ハッと目を隠すように半分伏せる。

あれから暫くして部屋に戻り、椅子に座ってどうしたら良いのか考えていた。

そこに、街長がまた訪問して来たのだ。

座ったままの、私の前に立つ街長。


長く、すんなりしたペン胝(ダコ)の付いた指が、私の顔へと伸びてくる。

今は無い、涙を辿る様に、指が瞼(マブタ)を拭う。

思いがけない、優しげな仕草に、つい油断してしまう。

「ワタシは…」

ガツン!!

“ワタシは…”のその先は、聞く事が出来なかった。

異音(イオン)と共に突然言葉を切った街長が、私の方へと、倒れこんできた。

驚いて押し返すと、そのまま抵抗無く横へと倒れる街長。

街長(障害)が無くなった視界の向こう側には、ツボを振り下ろしたポーズの、セリが居た。

「リールさん、ここから出ましょう!」

セリは、勇ましく宣言した。

そして、ツボをその辺に置くと、私の手を掴んで扉の外へと駆け出した。