『書けた?じゃあ、急だけど、よろしくな』



と、早くも電話を切ろうとする祐太を、あわてて引き止めた。



「ちょっと待ってよ!ねえ、空港からシャンゼリゼ通りまでは、どうやって行くの?」



不安が募る。



「シャンゼリゼはおろか、フランスにだって初めて行くのに、たったひとりで、どうしろっていうのよぅ」



『そうか、そうだよな、ごめんな』



半泣きの声を聞いて、さすがに悪いと思ったのか、祐太の話し方が少しゆっくりになった。



そして、シャンゼリゼまでの行き方を教えてもらう。



最後に、すごい混雑だから待ち合わせ場所から絶対に動かないように、と注意された。



『じゃあ、気をつけて来いよ』



と言われ、電話を切る。



…それからの私は、というと。



搭乗案内のアナウンスを聞くまで、ただただ呆然としていた。