それからの日々、私たちは、それぞれの勉強に忙しかった。



といっても、もちろん学生としての勉強ではないんだけど。



私はフランスのガイドブックで、1ヶ月の間、どこをどう回るかの計画を立てるのに必死だった。



そして紗江子は、デジカメで撮ったケーキの写真と、単語帳に書いたケーキの名前を見比べながら、ブツブツ言ってる。



紗江子は、長年、大人気ファストフード店の行列をさばいてきただけのことはあって、仕事の覚えが早く、手際もいい。



店長も、これならクリスマスもなんとかなりそうだと、満足そうだった。



でも紗江子は、ケーキの名前がいつまでたっても覚えられない!と、今日も隣りでぼやいてる。



「あのオッサンの脳みそのどこに、こんなオシャレなネーミングセンスが宿ってんのよ」



受験勉強レベルだわ、と、講義もそっちのけだ。