一度『出来損ない』に戻ると全ては、どうってことのないものに思える。 所詮、俺は何処までいってもその程度の人間だと。 絵理子はしばらく泊めてくれないか、と云った。 金は有るがホテル暮らしはもう飽きたのだと。 それに医者が側にいるのは安心出来るでしょう、とも云った。 特に断る理由もない。 独りでいるのは辛い。 最初はそんな軽い気持ちでいた。 何度も悪夢にうなされることになるなんて、考えもせずに……。 勿論、絵理子の“企み”等、知る由もなく……