「や、やだっ!やだやだやだ!今の私は“使える女”!」
呼吸が荒く、茶色い瞳に涙をためて、しゃがみこむ文香。
空から降ってくる雨が、さっきまで乾きかけていた髪と白いワンピースを濡らしていく。
頬にもたくさん水滴がついているけど、それは雨なのか涙なのかは分からない。
僕は、急いで自分がさしている傘で彼女が濡れないようにした。
文香は体をブルブルとさせながら、耳から手を離し、震える両手で僕の右腕をつかんだ。
「ご、ごめん。さっきのユキくんに言ったんじゃないの……。
ちょっと嫌な人と思い出しちゃって」
メニュー