愛川の兄ちゃんの隣にいる女は何があったのか知らないから、状況が理解出来ていない。 ただギュッと、愛川と同じような腕を抱きしめている。 横目で隣を見ると、文香はまぶたを下げていた。 ちょっとした沈黙――。 「私、リュウくんに“ありがとう”って言いたいよ」 文香の茶色い瞳を隠していたまぶたが上がった時、彼女が愛川の兄ちゃんに微笑みかけた。 沈黙がほぐれる。 「リュウくんは私を傷つけたくないから、離れていったんでしょ?私も良くんから、リュウくんのこと聞いた」