文香は耳の後ろに手を置いて、何かを考えるように目を閉じ、横にのびるくらい上唇と下唇をギュッと密着させた。 確か昨日も耳の後ろに手を置いていたな。 文香のクセなのか? 左ひじを机の上に置いて頬を左手にのせると僕の視界は左に傾く。 傾いた視界の背景には騒がしい教室、ハッキリと僕の目に移ってるのは考えてる文香。 そんなに考えることなのかよ、ただ家がいいかダメか聞いてるだけなのに。 「ダメなの?」 待つことに我慢出来なくなって言葉を発すると、文香は素早く目を開けた。