文香は、いつもこの痛みを耳の裏に与えているんだよな? 我慢しろ、僕。 「だから、ハルの名前を変えよう、って考えたの」 爪が、ゆっくり肌から離れる。 くい込んでいたところには、くっきりと爪痕が残っている。 正直、文香が言ってることなんて頭に入ってきてない。 なんとなく聞いてはいるんだけど、痛みで集中出来なかった。 そっか――だから文香は爪を立てるんだ。 文香は、いつもツラいことがあったら痛みで忘れようとしているんだ。 それがクセになって。