まぶたに当たる、暖かいもの。


タケの舌だった。


「タケ……」


ペロペロと僕の頬や目元を舐める。


涙はタケの体の中へ。


また、心の中の何かが緩んで涙が溢れる。


「っ……ありがとう」


腕の中に入れていたタケを床に下ろし、手のひらで目をこする。


文香との関係が終わった、ということは、もうこの家に来る必要がないということ。


タケと会うこともない。


「今日でバイバイだな。じゃあね」


最後に頭を1回だけ触って、僕は文香の家を出た。


外に出ると僕の涙が乾くくらい、太陽が輝いていた――。