彼女は、何かを思い出すように強くまぶたを下ろした。 そして、さっきより声のボリュームを上げて叫んだ。 「だって……だってリュウくんは耳にキスするのがクセだったもん!リョウくんも!」 ……え? 今、リョウって言ったよな? 「リョウって、愛川 良じゃないの?」 文香は、今日この家に来る前に“ミカ”と言った愛川と同じように、耳の後ろに置いていた手で口を覆った。 リュウはよく分かんないけど、名前の響きから……多分…… 「愛川の兄ちゃん?」