「ゆ、ユキくん!?体調が悪くて早退したんじゃないの?」


玄関のドアを開けて僕を見た瞬間、文香は口元を左手で覆って叫んだ。


「ただのサボリ」


僕は、彼女の口元を覆っている左手を口元から離して、手のひらに赤いリードの輪になってるところをのせた。


「タケとはぐれたんだろ?さっき、この辺で会ったから連れてきた」


文香は手のひらにのった赤いリードに気づき一瞬だけ僕を見た後、指を曲げてリードを握りしめた。


「あ、ありがとう。……タケとは、どこであったの?」