おいおいおいおいちょい待てよ。

14日ってそういうことだったのか…今更ながらなんて馬鹿なんだよ私。
一応女子の端くれぐらいなんだからイベント事くらい把握しておこうよ私!


とどのつまりは委員長が朝他校の女の子から貰ったものはバレンタインチョコにカテゴライズされるわけで、わー委員長隅におけないわね!じゃなくて!



今までバレンタインが無縁だと言うわけでもなかった。
マサは去年くれたし、小さい頃から女の子に貰うことも多かったから。


しかし女の子が主役であるはずのイベントで私に決定的に欠けていたのは、“チョコレートを渡す相手”である。

そのため2月14日がバレンタインであるという認識自体がほぼ無いくらいで、何故かこの日になると葵が物を要求してくるので、彼の「なんか僕にちょーだい」という性別を誤ってしまいそうなほど可愛い魔王顔を見て初めて、2月14日を意識する程度だ。


私にとって2月14日は、バレンタインデーではなく“葵に恐喝されるデー”、少なくとも去年までは。


葵がすでに転校していなかった高校二年のバレンタインデーは平和だったわけだが、非常に残念なことに今年は妙な因果のお陰で同じ学校である。



やべ…帰りたい。




「あれ、彩賀さん、この私と同じ位の高さのプレゼントって…チョコレートじゃないよね?」



一体何を包んだらこんな大きな包装になるんだ。
人一人はいるじゃないか…。


私は机の横に堂々と置かれた、ハート形が散りばめられた如何にもバレンタインデーらしいラッピングに顔をしかめながらも、その箱を人差し指で数回弾いてみる。


意外と重いモノが入っているようだ。




人間入ってたりして…いやいやばかばかしい。




「等身大・彩賀涼華チョコレートですわ!さぁ!思う存分私を食べてくださいまし!」



「…」



「すげー!彩賀ちゃん、ほんかくてきじゃーん!」


「当然ですわ!型を取るところからカカオの収穫まで手作業でしたのよ」



うわ…本当に人一人入ってた…