「いや、なんも…。あ…」


「てめぇ…、なんかあったな」


誤魔化せない素直な自分が憎い!
冷や汗が背中を滑り落ちる。
要冬真は犯人を突き止めた探偵のように怒りのこもった視線をこちらに向けた。



「カバディが解らないから陽介に聞いたんだよ」


わざわざ聞いたんかい!

大体私だってルール全然わかんないのに。

勉強家だね!




「二人じゃできないらしいな」


インターネットで調べてもらった、と要冬真は偉そうに鼻を鳴らした。

いや、なんでそんな偉そうなの?
しかも陽介さん、わざわざ調べたの?執事の鏡ねってそうじゃない!

正直に言わないと粛清される!


「おおおおでこにチューされました!」


あまりの恐怖に両手で距離をとりながら叫ぶと、彼の眉間のシワが忽ち倍に増えた。

ぎゃあ!
正直に言ったのに怒りのオーラが増えた!
最早具現化レベル!



「で、でも久遠寺くんはおでこだし、なんだかんだで二回目だし!」


「二回目だぁ?」



「ひぃ!」
怖い!
ちなみに1回目は2階から飛び降りた時です!



「お前、何回誰とキスした言ってみろ」


「は?そんなの覚えてない!」

「覚えてないほどしたのか」



「え?は?違う!!」

げ!
なんだよめんどくさい奴!



「それから、俺様の事一度もちゃんと呼んだことないだろそれも許せねぇ」


「はぁ?なんだっていいじゃんそんなん!亭主関白か!さだまさしか!俺より早く、寝てはいけない、寝てやるわ!午後九時就寝だわ!」


「うるせー黙ってろ」


喧嘩によって開いていた距離が、一気に近付き一瞬で顎を掴まれ乱暴に口を塞がれる。


噛みつかれるようなキス。


目を閉じる暇もなく浸食される神経が痺れて動けない。

角度を代えて吸われた下唇がドロリと湿っていくのが分かる。
伸びてきた右手が後頭部を掴み、隙間から滑り込んだ指先の感覚に目の奥が途端に熱くなった。

髪が逆立ち体中が痺れる。


長いキスの後、ゆっくり離れた唇から湿った音が漏れて心臓がドキリと高鳴った。