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 どうしたの????

 腕を引っ張られながら、メイは必死で彼についていった。

 お色直しの時に、いきなりカイトが殴り込んできて、理由を説明することなく、彼女をどこかへ連れて行こうとする。

 彼女の方は、と言えば―― 背中の途中までおろされたファスナーのまま、走りにくい危険なハイヒールを、蹄のように鳴らしながらの移動だった。

 バージンロードを駆け抜けた時よりも、もっと速かった気がする。

 彼らが通り抜ける瞬間、周囲の人がぎょっとした視線を向けた。

 当たり前だ。

 彼らは、どう見ても本日主役の、新郎新婦以外の何者でもなかったからだ。

 エレベーターに差し掛かり、ちょうど降りてきた人とすれ違いに、その箱の中に放り込まれる。

 あっと思った時には、彼女は奥の壁に手をついて自分の身体を支えていた。

 いや、壁じゃない。

 そこにはガラスが入っていて、いまの自分の姿を大アップで見ることとなったのだ。

 自分だけじゃない。

 イラついた指で、「閉」のボタンを押したカイトの動きも、くっきりと映っていたのだ。

 そして。

 下に向かって、エレベーターが動き出した途端。

 彼が、こっちを見たのが分かった。

 鏡ごしに、はっきりと目があったのだ。

 一歩。

 鏡の中の目が、自分を捕らえたまま、強い一歩が彼女の方に踏み出された。

 余り広くないエレベーターの中に、パニエでふくらみを持たせたふんわりドレスがあるのだ。

 その一歩で、彼の足がドレスの領域を侵犯した感触が伝わる。

 あ。

 肌に触れている空気さえも、痺れさせるような何かがそこにはあった。