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「えっえー!! ずるーい!!」

 ハナは、絶叫した。

 普通の状態であれば、絶対上司から注意されてしかるべき音量と口調だ。

 しかし、誰も注意する人間はいない。

 彼女がハナである、ということもあったが、今が―― 定時をとっくに過ぎた夜ということのおかげだ。

 かなり、みんな判断力が麻痺しつつある。

 コトの起こりは、誰かが机に出しっぱなしにしていた封筒を、彼女が見つけたところからだった。

 それには、金シールが貼ってあったのだ。

 差出人は。

「私も、シャチョーの結婚式に出たいー!!」


   ※


 ぶっすー。

 すっかりふくれっ面になってしまったまま、ハナは仕事を続けていた。

 聞けば、第一開発部の人たちは、全員披露宴の招待状をもらっているらしい。

 それから、第二と第三も上の方だけには、回ってきてるというのだ。

 しかし、ハナにはない。

 所詮、彼女は第三開発部の人間で、そして下っ端だったのである。

 ちぇー! ちぇー!!!

 どうせ結婚式を挙げるなら、私が第一に入ってからにすればいいのにー!

 ワガママの限りを尽くしながら、彼女は椅子をギシギシ言わせた。

 せっかく、昨日シャチョーにゲームを見てもらえる約束を取り付けて上機嫌だったのに、今ではすっかりそれも墜落だ。

 第一のメンバーが、誰1人とその招待状を譲ってくれなかったのも、不機嫌の原因だ。

「1万でどう? 1万でー!!」

 そう懇願する彼女に、「パー券じゃないんだから」とみんなニヤニヤしたのである。

 パー券の方が、よっぽど楽に手に入る。

 これは、芸能人の結婚式に、潜り込むようなものなのだ。

 少なくとも、ハナにとってはそうだった。