すべての曲が終わり龍治は静かに語り出す。
「今日は、こんな雨の中、最後の俺達まで残ってくれてありがとう。」
わぁぁっという観客席からの声と降りしきる雨。
「まだまだ全然ルーキーな俺達だけど、ドラムのハイジに実はプロドラマーの話がきてます。」
俺達のファンらしき女の子達が、『え〜』と声を出す。
「決断するのはハイジ本人です。だから俺達も後押ししたい。
……でも、ホントに、本音を漏らすと、手放したくないんだ。」
マイク越しに龍治の優しい掠れた声が響く。
一瞬俺に振り返った時の龍治の顔は
雨で濡れてたけど
−……泣いてる、気がした。



