−なんだ、あの声…!
さっきまで超ムカついてた奴の歌声。
すっげー妖艶なんだ。
過激なくらいのエロい歌詞なのに
嫌気が全くしない。
寧ろ、あの声だから歌える代物だと思えるくらいだ。
ただ…
「声に、周りの演奏が喰われてるな。」
「あぁ。だからあいつは、礼治を欲しがるんだ。」
成る程。
確かに、あいつの声にこのクオリティの低い演奏は勿体ない。
「あいつは自分で自分の才能をわかってる。
ムカつくけど、あの歌声には敵わない…。」
龍治は悔しそうに顔を歪め、下唇を噛み締めた。
この顔…SUGAR BEATの演奏を見た時と一緒。
龍治が『敗北』を感じた時の顔なんだろう。
俺は、負けてねぇと思うんだけどな…。



