みるみる透き通っていく自分の体を見つめながら、ローズはキュッと服を掴んだ。


「まったく…この体で外に出るなんて。人に知れたら大変な騒ぎですぞ?」

白衣を纏った老医師が、自慢の白い顎髭を撫でながら言う。


しかしローズは応えようとする素振りも見せず、ただ黙って下を向くばかりだった。


そんなローズに、老医師は浅く溜め息を吐き、注射針に目を落とした。


「…よし、これでいい。」

処置を終えた老医師は、ローズに向かって真っ直ぐに言った。

「貴女はクリスタルの身分でなければならない。
何故なら、貴女はこの国の姫君だからだ。…失礼。」

そう言って、老医師は黒い往診鞄を持って出て行った。


ローズは、老医師が部屋から出て行くまで、彼の背中をジッと睨んでいた。


バタン、ドアが閉じるのを確認してから、ローズは溜め息混じりに言った。

「…もう寝るわ。今日は疲れたの。」


「姫様!そのような小汚いドレスはお脱ぎくださいまし!
こんなもの、一体どこで手に入れたんだか…」

ハァ、ばぁやの深い溜め息を聞きながら、ローズは遠すぎる天井を見つめた。