バイトを辞めようと決心した。
たっくんに会えなくなるけど…
恵さんにも会わずに済む。
もう耐えられない。
あの目………
泣きそうになりながら、ただただメロンを切り続ける私に誰かが声をかける。
「今日から月曜日も入ることになりました。よろしくお願いします!」
先週から新しいバイトが数人入ったと言ってたっけ。
恵さんが辞めると思った店長が高校生を何人か募集してた。
「こちらこそ、よろしくね。中田ゆかりです。」
「噂に聞いてます。噂通りかわいくてびっくりです。私中原って言います。」
私より少し背の高いその子は、かわいい笑顔で私の隣でメロンを切る練習をしてる。
「ゆかり先輩、どぉしてメロンなんですか?私スイカが良いです。」
真剣な顔でそんな事を言う後輩がかわいく思えてきた。
先輩…って響きに少し喜んでるんだ。
冷蔵庫の中のさくらんぼをじっと見つめてたから、内緒で一つだけあげた。
「わぁーい!おいしいですー。私、ゆかり先輩とずっと同じシフトが良いなぁ。」
こんなかわいい事言ってくれる。
「さくらって呼んで欲しいんですけど、ダメですか?」
さっきまで泣きそうだった私を、笑顔にしてくれる『さくらちゃん』の存在が、
もう少しバイト続けようかなぁ…なんて思わせてくれる。
私達は洗いものをしながら、
床を拭きながら、
いろんな話をした。
そういえば、ここで働き出してから何でも話せる友達なんて出来なかった。
それは、たっくんの彼女だから…?
初めてできた後輩のさくらは、私とたっくんが付き合ってる事も知ってて…
恵さんとの事も
なんとなく知ってる。
さすが…みんな 噂が好きだなぁ…