「ばーっか、そこ公式がちげーよ!」

「?……おっ、ホントだ」



うだるような暑さの昼下がり。

幸喜が「たまには受験生らしいことをしようぜ」と、僕の家にやってきた。


そう言いながらも、幸喜のことだからどうせゲームしに来たんだろうと思ったけれど、彼はマジメに参考書とノートを広げた。



「……幸喜はどこ受けるの?」

「あ?R大。家から近いし」



R大。柚羽さんの大学だ。



「おまえは?」



シャーペンを片手で器用にクルクル回しながら幸喜が聞く。



「……S大」

「そうか。S大だったら実家から通うの厳しいな。念願の1人暮らしじゃん」

「……まぁな」