唯一の手がかりは、恐ろしい手がかり。

暴走族の集団に、たった1人で飛び込む勇気が僕にはなかった。


国道のことを僕よりも詳しい幸喜や健二に助けを求めようかと思った。

だけど、永輝さんの世界そのものが違う。

そして受験生の僕たちにとって大切な夏休み。

だからこそ、巻き込むことはできなかった。



「くそっ」



柚羽さんと会わない平日の夜。

机の上には参考書とノート。

さらにその上には、人探しメモ。


最初は受験勉強の休憩中にメモを眺めていた。

けれど気付けば、永輝さんのことで行き詰まると勉強と逆になっていた。



永輝さんは、どんな人だったんだろう。


目の前の窓の外に広がる夜空を眺めながら、ふと思う。