でもそれは、玲奈の一言で、また一瞬にして消え去っていった。



『…違うわよ、バカ』



きっと玲奈は、僕が冗談でそう言ったのだと思ったんだろう。

長い沈黙を経て、笑いながら言葉を返した。



『晶に貸していたCDを返してほしくて。直接返してもらうのはあれだから……』



バカと言い放った時の勢いとは裏腹に、玲奈は言葉を濁した。


なんだ、CD返せの電話か。

…そんなの、メールですればいいじゃないか。

今の僕に、声を聞かせるなよ。



「……始業式の日に、靴箱に入れとこうか?」



僕がそう提案すると、玲奈は「助かる」と安心したように笑った。

電話は本当にそれだけの用事で、他に何も話すこともなく終わった。