「……永輝って…?」



やっとの思いで出てきた言葉。

実は僕が何も知らないということを悟ると、彼女は掴んでいた僕の腕からそっと手を離した。



「……ごめんなさい」



あの怒りに満ちた表情からは想像できなかった彼女のうつむく顔。

僕よりずいぶんと背の低い彼女の顔は、目元しか見えなかった。

それでも、彼女が今にも泣き出しそうな顔をしているのが分かった。



「いや、いいよ…。謝らないで」



そんな彼女を見て、僕は、ただの人探しなんかじゃないと思った。



「永輝って人を探してるの?」



僕がそう聞くと、彼女は力なく、小さく頷いた。