食い入るように赤いスポーツカーをじっと見ていた。
やがて車が走り去ると、その子は大きな溜息をつく。
少し離れたところにいる僕でさえも分かるほどの、大きな溜息。
そしてまた、ぼんやりと、悲しそうな目をして国道を眺めていた。
「腹減らねぇか?」
「だなー。なんか食おうぜ。…晶?」
「あ、そうだな」
サッと視線を外した、ぎこちない態度の僕の顔を健二が覗き込む。
「おいおい、どうしたよ?初めての国道はもう飽きたか?」
「いや、そんなことないよ。なに食う?」
……ナンパ待ちでも、待ち合わせでもない。
あの子は誰かを探しているのだと、僕は思った。
赤いスポーツカーに乗っている誰かを。