「……だから、ごめんね」



真夏の太陽がじりじりと照りつける中、セミの鳴き声が鬱陶しく響く。


高校最後の夏休みを目前に控えたある日。

大好きな彼女・玲奈とたくさんの思い出をつくろうとしていた僕は、たった今、別れを告げられた。



「……ウソだろ?」



男のくせに、僕は情けない声で、玲奈に確かめる。

そうなるのも無理はない。

昨日の夜まで僕たちは、誰が見ても羨むようなカップルだった。


昨日の夜2人で花火をした後、当たり前のようにキスをした。

玲奈に「好きだ」と言ったら、玲奈もまた「あたしもよ」と笑ってくれた。


別れの前兆が全くなかっただけに、僕は玲奈の冗談に違いないと思った。



「ウソじゃない。あたし、好きな人がいるの。それは晶じゃない」