「永輝くんのことはまだ話していないけど、気付いているような感じだったよ。柚羽さんには、ひたすら謝ってた」

「……なんで、こんなことになったんだろう」



僕は手の中にある指輪を眺めながらぽつりと呟いた。



「姉さんの永輝くんに対する気持ちは、依存だったんじゃないかな。依存と未練を穿き違えていたっていうか……」

「そうなのかな」



僕には恋愛への深い考えがなかったから、かんなさんの気持ちや、遼太郎さんのそういう考えがピンとこなかった。



「好きになりすぎると、周りはおろか、自分自身の本当の気持ちさえ見失うことがあるんだよ」

「……うーん…」

「ま、おまえにはまだ分からんだろうが」



遼太郎さんが僕の額を指で強く弾いた。



「……あのさ、遼太郎さんって、引越しした?」