「柚羽のこと、ありがとう」

「……そんな、ありがとうなんて…」



謙遜する僕に、永輝さんは静かに笑った。


2人の姿が次第に薄れていく。

僕はただ黙って、その光景を最後まで見届けた。


永輝さんに言いたいこと、聞きたいことはあった。

けれど僕は、何も言わなかった。



「晶くん、ありがとうね」



柚羽さんの、最後の言葉だった。




―――チャリーン……



2人の姿がすっかり消え去った後、指輪が転がっていた。

柚羽さんの名前と、2人が出会った日付が刻印された、永輝さんの指輪。