この部屋で過ごした、永輝との時間。

永輝が当たり前のように使っていた灰皿。



『中に何が入っているの?』


永輝にもらったキャンディ。


『――……愛情』


不思議な食感を聞いたあたしに、永輝はそう返した。




『泣くなって……』


出会ったばかりの頃。

アパートのカギをなくして、途方に暮れて泣くあたしにそう言って優しく頭を撫で続けてくれた。



『……ありがとうね』


真夜中の、あたしたちの時間。

永輝は新聞配達のバイクの音を合図に帰るのに、最後の日だけはそれを無視した。

そして、永輝の最後の言葉だった。