「……あたし、思い出した。あの日のこと」

「やめろって!」

「……あの日……―――」



耳を塞ぐ僕に、話し始める柚羽さんの声が聞こえてくる。

どんなに力強く耳に手を押し当てても、聞こえてくる柚羽さんの声に、僕は泣いてしまった。



「晶くん」



柚羽さんの小さな手が僕の手を耳からそっと外す。



「これが、真実なんだよ。あたしが死んだっていう。ちゃんと聞いて?」

「………イヤだよ。柚羽さんまで……」

「目をそらさないで。ちゃんと、受け止めて」



真実を、受け止める……。


僕に、そんな勇気があるのだろうか。

目の前にいる、僕の手に触れているこの人の死を。